タイの台風名に込められた意味とは

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こんにちは、台風7号(メーカラー)がフィリピンの方に発生しています。ちょうど、【メーカラー】はタイの台風名で執筆を台風が終わるまでに頑張りたいと思います。

前回はカンボジアの台風名の紹介でした。カンボジアの台風名は、祓いの力を持つものが多く、脅威から身を守る術を風習として残しているのかと思いました。まだ読んでいない方は、こちらからご覧ください。

カンボジアの台風名に込められた意味とは
カンボジアの台風名の背景には、神話や伝説に基づく多様な意味が込められています。例えば、「ダムレイ」は象を象徴し、神々への信仰を表す一方、「ネサット」は漁師として水の神々に感謝する役割があり、雨の恵みや自然への畏敬が強調されています。

さて、タイの台風名の紹介です。各国で特徴的な名づけがありますが、【ブラバ(東)】とは何を指すのでしょうか。1つずつ調べていきたいと思います。

ブラピルーン(雨の神)

タイは古くから米作りを中心とした農業国であるため、雨をコントロールする【ブラピルーン】は非常に重要な神様として信仰されています。

【プラピルーン】は、龍(ナーガ)の背中に乗り、片手に剣を持った姿で描かれます。この剣は悪を退けるだけでなく、雲を切り裂いて雨を降らせる【天候をコントロールする力】の象徴のようです。どうやら、【Phra(プラ/ブラー)】は神仏に付く尊称のようで、タイの神様には多く登場します。

【ブラピルーン】に関する逸話は調べてもそこまでなく、背中に乗っていたとされる【ナーガ】について調べてみることにしました。

ナーガ】は、水、豊穣、そして仏教の守護を司る巨大な蛇の神(龍神)で、元々インド神話の蛇神ですが、タイの民間信仰や仏教と深く結びつきがあるようです。

タイ東北部(イサーン地方)の大河メコン川には、今もナーガが底深くの地下都市(バダン)に暮らしていると本気で信じられています。毎年10月の乾季の始まり(オークパンサー/出家安居明けの日)の夜、メコン川の水面から原因不明の赤い光の球が次々と空へ飛び出します。地元では【天界から戻ってくるブッダを迎えるために、ナーガが口から祝祭の火を吹いている】と信じられており、毎年多くの観光客が集まる一大祭りとされているようです。

【ブラピルーン】の伝承はあまりないものの、【龍神:ナーガ】と共にある存在なので、雨のコントロールができるといった【恵み】を分け与える神様なのかもしれません。このように、タイの人達にとっての水害を回避してもらうための神様として【ブラピーン】を台風名に名づけたのかもしれません。

ブラパ(東)

タイにとって東には何があるのでしょうか。気になる名づけですね。調べてみたところ、【ブラバ】には、【東方を守護する神:プラ・ブラパ】【精霊が宿る東の大森林:パー・ブラバ】の2つの伝承があるようです。

【プラ・ブラバ】は、タイのバラモン・ヒンドゥー信仰(方位神の概念)において、東の方角を司る守護神を指します。タイでは古くから、8つの方角(八方)それぞれに世界を守る神様が配置されていると信じられており、東(ブラパ)の方向は天界の王である【プラ・イン(インドラ神/帝釈天)】が守護しているとされています。家を建てる際や儀式を行う際、東の神様(プラ・ブラパ)に敬意を払い、幸運や日の出のような「始まりの繁栄」を祈る言い伝えがあります。

また、【パー・ブラバ】を指すのは、タイの東部地域で、古くから「ブラパ(東方の地)」と呼ばれてきました。この東部エリアには、世界遺産にもなっている【ドンパヤーイェン-カオヤイ森林地帯】などの広大な大自然が広がっています。地元の古い言い伝えでは、この東方のジャングルには、【自然の精霊:プー・サーム・サミアン(森の守護霊)】や、人を惑わす悪霊、ナーガ(蛇神)の隠れ里があるとされ、猟師や旅人は森に入る前に必ず東の精霊に祈りを捧げなければ命を落とすと恐れられていました。

2つの伝承を見てみると、タイの【ブラバ】には信仰するものがあり、蔑ろにすると不幸の始まりなのかもしれないです。そのため、台風の名づけにすることで、この2つの伝承を継承しようとしているのかも、と思いました。

ちなみに、タイに上陸する台風は、すべて東(南シナ海や太平洋)から西に向かって進んで来るため、【ブラバ】に警戒するのはそういった理由もあるのかもしれません。

ウィパー(女性の名前)

【ウィパー】は、主に【輝き】【光】【美しさ】を意味するタイの一般的な女性の名前ですが、信仰と直接的な結びつきもなく、「ただ人気だから」としか説明がされていません。そこで、【輝き】【光】【美しさ】がタイにおいて何を指すのかを調べました。

【輝き】は神聖さ、徳、そして悟りの光そのものを象徴する最も重要な要素であるそうです。タイでは、徳を多く積んだ高僧や正しい王、神様は、目に見えない【聖なる輝き(バラミー)】をまとっていると信じられ、この輝きが強い存在の近くにいるだけで、人々は災いから守られ、【幸運】がもたらされると言い伝えられています。

【光】は、【暗闇(無知や苦しみ)を照らす仏陀の智慧(ちえ)】や【神仏が放つ聖なる守護のパワー】を象徴する極めて神聖な要素を表すようです。タイには、太陽の光そのものを「神の降臨」や「宇宙の調和」として信仰する古い歴史があり、パノムルン神殿は年に4回だけ、15個の神殿の扉すべてを一直線に太陽の光が貫く現象が起きます。とても神秘的な光の現象です。

【美しさ】は、単なる外見の華やかさではなく、「前世から積んできた美しい心と高い徳(善行)」が外側に溢れ出た結果であると考えられています。タイの上座部仏教では、生まれつき容姿が美しい人や、誰からも愛される魅力を持つ人は、「前世で熱心に徳を積んだ人」であると信じられているそうです。

【輝き】【光】【美しさ】と要素をみていくと、徳に左右されるものであったり、神様の恩恵を受けるものだったりと、ただ人気な名前という訳ではないようです。このように、【ウィパー】は3つの洗練された願いが収束された意味であり、台風のような神秘的な存在と重なるため、名づけられたのかなって思いました。

ブアローイ(お菓子の名前)

【ブアローイ】は、「水面に浮かぶ睡蓮(蓮の花)」を意味する、アユタヤ時代から愛されているタイの伝統的なお団子デザートです。タイの信仰・民間伝承において、ブアローイはその形から非常に縁起の良いお菓子とされています。

【ブア】は蓮、【ローイ】は浮かぶという意味で、温かく甘いココナッツミルクのプールに、カラフルに色付けされた小さなお団子がぷかぷかと漂う姿が、水面に浮かぶ美しい睡蓮の花に見えることから名づけられたようです。

お団子の丸い形は【家族の団結、和合、変わらぬ愛情】を象徴しているため、現代でもタイでは結婚式や、お寺での特別な仏教行事(タンブン)などの吉事に欠かせないお祝いの品として振る舞われます。

また、タイの華人社会では、毎年12月の冬至の日に【ワン・ワーイ・ブアローイ(ブアローイを拝む日)】という伝統行事があります。この日は神仏や土地の精霊にブアローイを供え、「この1年家族が無事に過ごせたことへの感謝」と「新しい年の幸福」を祈る大切な言い伝えが現代でも続いているようです。

【ブアローイ】は、団結であったり、願掛け的な役割であったりと、タイの中では浸透された意味をなしています。台風という存在も円形ですが、おそらく身内に被害が受けないような願いを込めた名づけとして台風になったのかもしれません。

メーカラー(雷の天使)

タイの伝承において、メーカラー】は、「海」と「稲妻(雷光)」を司る非常に美しい女神(精霊)です。次のような伝承があります。

メーカラーは、海の波しぶきから生まれたとされる美しい天女です。彼女はどんな願いも叶え、目の眩むような強い光を放つ「魔法の水晶玉」を宝物として持っており、いつも雲の上でそれを投げて遊んでいました。ある日、その水晶玉の輝きに魅了された、斧を持つ凶暴な【雷の巨人(あるいは悪魔):ラーマースーン】が、水晶玉を奪おうと彼女を追いかけ始めます。メーカラーは空を飛びながら巨人をからかい、追いつかれそうになると水晶玉をかざして目つぶしの眩しい光を放ちました。これが地上から見える「稲妻」です。怒ったラーマースーンが彼女に向けて激しく斧を投げつけ、それが雲に当たって響く音が「雷鳴」だとされています。

タイでは、二人が暴れて稲妻と雷鳴が鳴り響くことで「恵みの雨」が地上に降るため、豊作を祈る雨乞いの神聖な儀式とされているようです。

【メーカラー】も中国の台風名に出てきた【ディアンムー】のような存在なのかもしれません。また、豊作を祈る儀式でもあるため、タイにとって台風は恵みをもたらす存在として名づけがされているのかもしれません。【ディアンムー】について学びたい方はこちらも確認ください。

中国の台風名に込められた意味とは
日本の台風名の調査を振り返り、中国神話や植物に由来する台風名について学びたいと述べています。具体的には、天馬、孫悟空、白鹿などの神話的存在や植物が名前に含まれ、台風の象徴する意味を探求する内容です。

アッサニー(雷)

タイの伝承や神話における【アッサニー】は、タイ語で「落雷」や「雷電」そのものを意味する言葉で、固有の人の形をした神様の名前というよりは、神話の中で神々が放つ【雷のエネルギー】や【究極の武器】として、様々な言い伝えに深く結びついているようです。

タイのヒンドゥー・バラモン系の神話において、アッサニーは天界の王である【プラ・イン】が持つ最強の武器が放つ雷の光や衝撃そのものです。

また【メーカラーとラーマースーン】の神話において、メーカラーが放つ光(セーン・プラップ)が【稲妻】であるのに対し、ラーマースーンがもたらす一撃が【アッサニー(落雷)】という対の存在として語られます。

タイは、雨季の始まりである 5月 と、終わりの 10月 が雷の最も激しいピークで、午後から夕方、バケツをひっくり返したようなゲリラ豪雨(スコール)と共に、【爆発音】に近い強烈な落雷と地響きが鳴り響きます。まさに【アッサニー】が日常にあるのです。

このように、【アッサニー】は神の戦いを映す姿であり、台風とともにやってくる【アッサニー】は畏怖と共に【大地への恵】を運ぶ存在として名づけがされているのかもしれません。

ニーダ(女性の名前)

タイ語の【ニーダ】は、一般的に「見事に育った女性」「清らかな女性」を意味する人間の女性の名前です。1つずつ調べながら紹介します。

タイ全土(特に南部)の【伝統芸能:影絵芝居】で最も愛されている悲恋の伝承が【12人の姫】というものがあります。

ある貧しい夫婦のもとに、一気に12人もの娘が生まれます。生活に困った親によって森に置き去りにされてしまいますが、12人の姉妹は過酷な環境の中で全員が見事なまでに美しい女性へと成長します。その美しさから全員がリゴール王国の王様に見初められて妻となりますが、それに嫉妬した魔物が化けた悪の王妃によって地下牢に閉じ込められ、目をくり抜かれるなどの凄まじい試練に立ち向かう、といった古典伝承です。

また、タイの伝承や実際の信仰において、【清らかな女性】のイメージは、上座部仏教の「徳(善行)」の教え、そして人々を悪霊や穢れから守る女神・精霊の存在と結びついています。タイの非常に有名な民間伝承に、生まれたばかりの赤ん坊を病気や悪霊から守る【守護女神 メースー】がいます。

メースーは、赤ちゃんが生まれた曜日(月〜日)ごとに異なる姿(金色の衣装をまとうなど)で現れ、赤ん坊のゆりかごの傍らで見守り、悪霊の穢れ(けがれ)を払って清らかに育てる役割を持っています。タイの古い家庭では、赤ちゃんが理由なく笑うのは「メースーが目の前で遊んでくれているからだ」と言い伝えられているのです。

このように【ニーダ】には、こんなんを乗り越えた【12人の姫】であったり、【メースー】のように悪霊を払う力があったり、と縁起の良さを感じさせます。おそらく、【12人の姫】の意味合いがタイの女性に名づけられる理由かと思います。しかし、台風は【メースー】のように人々を悪霊や穢れから守れるような強い力を持っているため名づけがされたのかと考えられます。

チャバ(ハイビスカス)

【チャバ】は罪人を処罰し、恥をかかせるための不吉な花といった意味があります。その背景には、シヴァ神の妻の狂暴な姿である【カーリー女神】と深く結びついて語られいるそうです。

カーリーは悪魔を虐殺し、その血を飲み干す恐ろしい破壊の女神です。彼女の好物が「生贄(いけにえ)の血」の象徴である真っ赤なチャバの花だと信じられていました。古代タイ人は【カーリー】への生贄とされるものに対して【チャバ】をかけると言ったものがあるためです。

タイのハイビスカスには良くない意味合いがありますが、日本や西洋では【繊細な美】【新しい恋】【信頼】【常に新しい美】といった良いイメージがあるため、驚きます。そのため、タイでハイビスカスを送ることは禁忌といえるでしょう。

このように、【チャバ】はタイの風習において縁起の良くないものであり、今まで紹介してきた台風名は縁起の良いものを中心としていましたが、今回はタイの風習として有名なものを名づけられたのかもしれません。

クラー(ばら)

【クラー】の花言葉は、基本的には西洋や日本と同じくを象徴しています。【クラー】に関する逸話に【神話:マタナパーター(バラの伝説)】があります。これがタイの伝承におけるバラの始まりとされています。

天界に、息をのむほど美しい【マタナ】という天女(神の娘)がいました。彼女はその美しさから多くの神々に求婚されていましたが、誰に対しても心を動かしませんでした。天界の強力な神(王)である【スラング】が彼女に激しい恋をし、熱烈にプロポーズをします。しかし、マタナは彼の愛もキッパリと拒絶してしまいました。プライドを深く傷つけられた神は激怒し、「ならば人間界へ落ち、トゲのある見たこともない美しい花に変身してしまえ」と、彼女に呪いをかけました。こうしてマタナは地上に落とされ、この世にまだ存在しなかった【バラの花】に変えられてしまいました。

この話にはつづきがあります。バラの花になった【マタナ】は満月の夜に人間の女性に戻ることができます。また、【マタナ】は「心から愛する男性」と出会い、両想いになることができれば、呪いは完全に解けて人間の女性としてずっと暮らすことができます。【マタナ】はある王様と恋仲に落ちますが、王宮の王妃(正妻)の激しい嫉妬や策略によって二人の仲は引き裂かれ、誤解が生じてしまいます。【マタナ】は天界の神スラングに「どうか私を元のバラの花に戻してください」と願い、二度と人間の姿に戻らない永遠のバラ(クラーブ)になって森へ消えていきました。王様は激しく後悔し、その美しいバラを王宮へと持ち帰って大切に育てたそうです。

このように【クラー】は、タイの国民に浸透された神話が残されているため、台風名に名づけられているのかもしれません。

カーヌン(果物の名前、パラミツ)

【カーヌン】は、世界最大の果物として知られる【ジャックフルーツ(パラミツ)】を指し、家に植えると最高の幸運をもたらす、最も縁起の良い神聖な木という非常に強いポジティブな伝承を持っています。

カヌンを家に植える際、そのご利益を100%引き出すための「方角と植え手」に関する厳格な伝承が残されています。タイの伝統的な方位信仰において、カヌンは【家の南西】に植えなければ効果がないとされています。この方角は家全体の「安定と財産」を司るため、そこに支えの象徴であるカヌンを置くことで家が強固になります。また、木を植えるのは、その家で最も権威のある【家長】でなければいけません。家長が自らの手で土を掘って植えることで、その家族全員に強力な後援者の加護が宿ると言い伝えられています。

このように、タイにおいて【カーヌン】は縁起の良い木として知られているため、台風の名づけとされているのかもしれませんね。

いかがでしたでしょうか。10個の台風名を調べてみたところ、神話によるものが多かったです。水害の神話ではなく、雨のコントロールをする神が出ていたため、台風がもたらす雨がタイ全土に恵みとして届けているのかな、と思いました。見返すことが大変なので簡単な説明を下に残したいと思います。

  • ブラピルーン(雨の神):雨をコントロールする信仰。【龍神:ナーガ】を従わせる
  • ブラバ(東):東の方向は【天界の王:インドラ神】が守護。台風も東から西へ抜ける
  • ウィパー(女性の名前):【輝き:神聖さ、徳、そして悟りの光そのもの】【光:神仏が放つ聖なる守護のパワー】【美しさ:前世で熱心に徳を積んだ人】
  • ブアローイ(お菓子の名前):家族の団結、和合、変わらぬ愛情
  • メーカラー(雷の天使):「海」と「稲妻(雷光)」を司る非常に美しい女神(精霊
  • アッサニー(雷):神々が放つ【雷のエネルギー】や【究極の武器】
  • ニーダ(女性の名前):「見事に育った女性」「清らかな女性」
  • チャバ(ハイビスカス):罪人を処罰し、恥をかかせるための不吉な花(カーリー女神)
  • クラー(ばら):【神話:マタナパーター(バラの伝説)】
  • カーヌン(果物の名前、パラミツ):家に植えると最高の幸運をもたらす、最も縁起の良い神聖な木

7号(タイの台風名:メーカラー)に続いて、8号(アメリカの台風名:ヒーゴス)も発生しているようです。皆さん、台風にはお気をつけて。

アメリカの台風名の背景と意味
アメリカの台風名は、現地語や人名に基づいて選定されています。自然現象や地域の伝承、宗教的な文化が反映されており、特に先住民の信仰や歴史が重要な役割を果たしています。この研究を通じ、土地と人々の関係が浮き彫りになりました。

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