こんにちは、前回、日本の台風名にどのような法則性があるのかを調べました。星座の逸話や日本で見られる時期といった観点から調べました。星座に関してはプラネタリウムで見聞きしたレベルでしか理解がなかったので、知らない星座が出てくるたびに、新鮮で勉強するきっかけをもらえたような気がしました。もしよろしければ、その時の内容を読んでください。

さて、中国の台風名は神話の生物や植物を台風名に上げていますが、下にあるを表をみてもあまり聞き覚えのない台風名がいくつかあります。今回は中国の台風名を中心に、どんな神話があるのかとか、植物が咲く時期や花言葉など、理解を深めていきたいと思います。

ティエンマ(天馬)
中国神話における天馬は、空をかける神聖な存在のようです。【山海経:せんがいきょう】や【龍馬:りゅうめ】といった伝説の中に天馬が出てきます。海山経の天馬は、馬の体つきに白い犬のような毛並み、そして黒い頭であり、人を見ると飛んで逃げ去ると言われています。私がイメージしていた天馬は純白な羽馬のイメージがあったのですが、それはペガサスのようで、天馬と異なる生物でした。
山海経というのは中国古代の奇書で、当時の人々が想像した世界の果てや、そこに住む奇妙な神々、怪獣、異民族、そして不思議な植物や鉱物を網羅した文献です。全18巻で山経と海経の2つに大別されるようです。日本の柳田国男が記した民俗学とかに近いのかもしれません。
龍馬は龍の頭と馬の身体を持つ神獣で、【宋書】には川の精霊であり、翼を持ち、天地合一の吉祥をもたらす存在と言われています。ペガサスより麒麟のようなイメージが近いのかもしれません。
【天地合一の吉祥をもたらす】というのは、「天(宇宙や自然の法則)」と「地(人間の生きる世界や大自然)」が完全に調和し、一つに結ばれることで、この上ない最高の幸運や繁栄がもたらされることを意味し、その条件が整うと、天候の安定の豊作、神獣の出現、社会の平和と繁栄に繋がると中国の思想の中で位置づけられています。龍馬はおそらく高位の神獣なのかなと思いました。
これらの内容を踏まえると、天馬(台風)が訪れるというのは、人から逃げ去る天馬の言い伝えがあるように、台風が立ち寄り、過ぎ去ることで、秩序が保たれるといった繁栄的な意味が込めているのかもしれません。
ウーコン(孫悟空)
孫悟空というと【西遊記】で登場する人物の1人です。簡単なあらすじを紹介します。石から生まれた猿が、道教の修業を経て神々をも凌駕する神通力を得て暴れ回ります。仏教の釈迦如来に調伏され、三蔵法師と共に天竺(インド)に旅をするという物語です。物語の中の神話的英雄です。
孫悟空は、西遊記以外でも日本では【ドラゴンボール】で同姓同名のキャラとして用いられているので、馴染みがあるキャラですね。しかし、西遊記は複写される過程で、要素がツギハギされているため、【水神:無支奇(むしき)】と【猿神:ハヌマーン】を紹介します。
水神:無支奇(むしき)は【山海経】の系譜を引く古代神話に登場する、淮水(わいすい)という川の猿型の水神です。怪力を持ち、最後は禹(う)によって鎖で山に封印されたというエピソードが、孫悟空が五行山に閉じ込められる設定の原型となったようです。中国の古代神話にこんなものがあるとは知らず、時間がある時に調べてみようかなと思いました。
猿神:ハヌマーンは【風の神:ヴァーユ】と、呪いによってサルの姿になった【天界の美女:アンジャナー】の間に生まれたため、生まれながらに超人的な力を持っていました。幼少期に太陽を「熟した果実」と勘違いし、食べようとしたところ、【インドラ】が武器を放ち、ハマヌーンの顎を砕いて地におろしました。ハマヌーンは【顎が変形した者】で、名前の由来です。インドラの事件により、ヴァーユは怒り、世界の空気を止めてしまいます。困った神々はハマヌーンの蘇生に加え、祝福(いかなる武器でも傷つかず、死をも自らコントロールでき、身体の大きさを自由に変えられ、風のように空を飛べる)をもらいました。戦力差で銃弾を受け止めれたり、ドラゴンボールで蘇生ができたり、大猿になったり、武空術で空を自由に飛び回っているマンガの孫悟空と一致しているところもあるなと思いました。
ある意味で、無支奇やハマヌーンを見ていると破天荒な様子そのものであり、突発的に接近する様子が台風だと示しているようです。
インシン(木の名前)
インシンは中国語で【イチョウ(銀杏)】を指す言葉です。中国はイチョウの原産地であり、現存する唯一の【生きた化石植物】といわれています。中国神話において、「天と地、神と人を結ぶ神聖な大樹」として、イチョウが位置付けられています。自然火災においても、イチョウは水分を多く含むため「火災を紡ぐ聖なる木」とされているようです。
街中でよくみるイチョウが、海をまたぐと生きる伝説として崇拝の対象となっているのは驚きです。その強い生命力が、被害にあった後も植えなおしが効く樹としての教訓を伝えているように感じます。
バイルー(白鹿)
中国の神話・民俗学において白鹿は「千年の寿命を持つ不老不死の霊獣」であり、最高の徳を持つ王が納める時代にしか現れない【天下太平・長寿の吉祥】を象徴します。道教や仙人思想の中で、シカは長く生きるほど体色の変化があると信じられています。500年で【蒼鹿:青い鹿】、1000年で【白鹿:白い鹿】、2000年で【玄鹿:黒い鹿】となり、白鹿は不老不死の先約を見つける脳路y句を持つ、仙人の忠実なパートナーの立ち位置であるといわれています。
山海経においても【夫諸】という神獣がいて、「姿は白鹿、しかし頭に4本の角がある」といわれています。その夫諸の逸話には「この獣が姿を現した町には、必ず大洪水が起こる」といった水害の予兆を示しているようです。
本来は夫諸の方が台風名にふさわしいのかもしれませんが、白鹿の方が知名度が高いために選出されたのかなと思いました。
フンシェン(風神)
風を司る自然崇拝の神が見であり、中国神話や山海経において、【飛廉(ひれん)】や【風伯(ふうはく)】があります。飛廉は中国古代神話における代表的な風の神で、「鹿の体に雀の頭、角があり、蛇の尾を持ち、豹の模様がある」といった異形の怪獣です。一方、風伯は中国古代神話において、天界の秩序を守る格式高い神霊として位置づけられています。風伯は【雨師(うし)】とペアとして語られ、古代の皇帝は農業に不可欠な「恵みの風と雨」を求めるための祀る催事も行われていたようです。
飛廉のような怪獣らしい荒々しさと、風伯のような豊穣に関連する要素は、台風の導きによってもたらされる。すなわち、フンシェンの恩恵だといった思いが込められているのでしょう。
ハイシェン(海神)
中国神話や民俗信仰の中で、広大な海を支配し、嵐を沈め、航海の安全を守る神々として古くから熱心に信仰されています。代表的なハイシェンは、【四海竜王:東海竜王、南海竜王、西海竜王、北海竜王】や【南海神:祝融(しゅくゆう)】、【媽祖(まそ)】と様々にいます。四海竜王は雲を呼び、雨を降らせる強大な霊力を持つ竜王です。祝融は火の神であったようですが、南の海の支配権も与えられ海神になったようです。また、媽祖は北宋時代に実在した不老不死の霊力をもつ女性が神格化され高見様です。赤い衣装をまとい、嵐の海を駆けて遭難した漁師や船を救うと信じられており、道教では最高位の海の神として崇められています。
色々なハイシェンがいますが、神が訪れるところに、嵐があるようです。そのため、台風は海神到来の警告を象徴するなのかもしれません。
ドゥージェン(つつじ)
中国神話の中に、【血を吐く鳥から生まれた花】というものがあります。古代の蜀の国王「杜宇(望帝)」は、治水に失敗して王位を譲り、山奥で亡くなるも、国のことが忘れられない彼の魂はホトトギス(杜鵑)という鳥に転生しました。鳥になった彼は、夜も昼も「早く我が家に帰りたい(不如帰)」と悲痛な声で鳴き続け、ついに口から血を吐き出してしまいます。その血が山肌の植物に降りかかり、真っ赤に染まって咲いた花が「杜鵑花(ツツジ)」になりました。ツツジは「強い望郷の念」「哀愁」「切ない愛」を象徴する花とされているようです。
ツツジの開花時期は4月中旬から5月中旬で、花言葉は「節度」、「慎み」と言われています。また、中国でツツジは【中国の十大伝統名花】と、格式の高い花です。伝統名花ということは中国で位置づけられた花ということなのでしょう。
台風の名づけにツツジをつけるのは、厳格な存在であるためか、有名な名前が列挙されただけなのか、その両方からきた名前なのかな、と色々イメージがふくらみます。
ディアンムー(雷の母)
中国の神話や民間信仰、道教において稲妻(雷光)を司る臨場感あふれる女神です。ディアンムーは、雷を落とすだけでなくだけでなく、威厳があり、エレガントな女性の姿で描かれているのも特徴の一つです。ちなみに、夫は【雷の神:雷公(らいこう)】という名で、太鼓を叩いて雷鳴を轟かせ、悪人に撃ち落とすといった神罰を役割としています。雷公が太鼓を鳴らす前に、ディアンムーは鏡の光(稲妻)で地上の隅々を照らして真なる悪人を見定めるといった判定を仕事にしています。そのため、「雷の前に稲妻が光るのは、ディアンムーが確認しているから」といった逸話が今でも語られています。
台風の訪れと共に雷光が発生します。ディアンムーの逸話が浸透されているのであれば、「今日は気をつけなければいけない日かな」と防災の意識に合わせているのだと思いました。
ムーラン(花の名前:木蘭)
ムーランは【モクレン:木蓮】のことです。蓮のような花で、蘭のような香りがするようです。英名では【マグノリア】であり、香水としても使用されている植物です。【楚辞】において、ムーランは仙人や魂を清める植物として登場し、仙人がムーランの露を飲むと、ムーランの気高い香りを身にまとうことで、自らの霊力を高め、邪気を払うといった描写があります。そのため、古代の中国人は「天界と地を結ぶ、神聖な霊気が宿る木」と考えらえていたようです。
開花時期は3月上旬から4月中旬で、春一番を告げています。しかし、標高2000mを超える高山地帯に自生するムーランは5月から6月頃に満開を迎えます。また、ムーラン自体は約1億年前から形を変えず生き抜いてきた【地球最古の被子植物】であり、ムーランの花言葉は「崇高」、「自然への愛」、「持続性」、「忍耐」、「威厳」と強さを誇るような意味が込められているのかもしれません。
古代から神聖視されてきた植物であり、春一番の香りを運ぶムーラン。移り変わる季節の象徴として台風名に挙げられたのかな、と考えさせられてしまいます。
ハイタン(海棠:ハナカイドウ)
中国原産の高貴な花であり、日本名では【ハナカイドウ】として、知られています。開花時期は4月上旬から5月上旬で、【ソメイヨシノ】が散り始めるころに開花します。中国の古典文学において、「謙虚」や「高潔さ」の象徴であり、【花にはほとんど香りがなく、自己主張をしない奥ゆかしさ】の花として知られているようです。
ハイタンの逸話はないものの、昔から中国の人から親しまれているのはイメージがつきます。台風名として荒々しさとかはないですが、その物静かな植物だからこそ、嵐の前の静けさとイメージが近いのかなと思いました。
10の台風名の由来について学びを深めてみました。嵐に関連するものや昔から神聖視されてきたものなどが台風名に選出されているようでした。大衆に認知できる名づけというのは、興味深いと思いました。
また、各国の歴史を調べていく中で、知らない神話や伝承もありました。それらを深めていくことで、【もじつけ】もより豊かな記述ができるのかもしれません。じっくりと、調べまとめていきたいと思います。


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