こんにちは、台風が7号と8号が過ぎ去り少し涼しくなるかなと思っていましたが、夏日のように暑い日になってしまいました。気がついたらもう7月です。
前回は、ベトナムの台風名の紹介でした。植物1つでも伝承や逸話が残されていることを知り、「この植物はどんな話があるのだろう」と少し気になりますが、季節ごとに身近な植物探索をして、「あー、ここにこの話があるのか」と浸ってしまいそうなので気持ちの中で留めています。いつかはやってみたいものです。そんなベトナムの台風名と植物の話を知りたい人は下記のブログを読んでください。

さて、今回は【マカオ】の台風名を紹介します。マカオというと暑そうなイメージがあります。少し調べると、年間を通じて温暖であるものの、夏が長く冬が短いという特徴があるようです。年間平均気温は約22℃前後で、湿度が常に70〜90%と高いです。ジメジメとした沖縄がイメージとして浮かびます。暑そうです。
そんなマカオの台風名で気になるのは【バビンカ】です。【プリン】を意味しますが、マカオとどのような関係があるのでしょうか。また、下に表を用意していますが、10個の台風名にはどのようなまとまりがありそうか検討もつきません。それでは1つずつ紹介していきたく思います。

サンバ(マカオの名所)
マカオの名所には、マカオ最大のシンボルである【世界遺産 :聖ポール天主堂跡(ダーサンバー)】があります。17世紀にイエズス会によって建てられたこの大聖堂ですが、1835年の大火事で建物のほとんどが焼け落ちてしまいました。不思議なことに神聖な正面の壁(ファサード)と階段だけが奇跡的に焼け残り、現地では「神の加護によって守られた奇跡の壁」として長く語り継がれているようです。
また、この壁には、聖母マリアや天使の像だけでなく、中国の龍の彫刻や、漢字による聖書の教えが細かく刻まれています。これは、ヨーロッパの宣教師と日本のキリシタン(迫害から逃れてマカオに渡った職人たち)、そして地元の中国人が協力して建造した証でもあります。世界でもここにしかない「東西文化のミックス」を視覚的に楽しむことができます。
このように、【サンバ】には歴史的建築物の【ダーサンバ】を想起させる用語でした。【ダーサンバー】は火事などに見舞われても奇跡的にファサードが残るなど、困難があっても神様が見守ってくれるといった守り神的な存在として台風名に名づけたのかもしれません。
ビバンカ(プリン)
【ビバンカ】は、マカオ独自の伝統的な料理(マカエンセ料理)として受け継がれているココナッツ風味の焼きプリン 【バビンカ・デ・レイト】のことを指します。
かつてポルトガルの修道院やアジアのキリスト教拠点では、修道女たちが伝統衣装(修道服)にパリッと「糊(のり)」をきかせるため、大量の卵白を使用していました。しかし、大量の卵黄が余ってしまったところ、修道女たちが小麦粉、ココナッツミルク、砂糖(ジャグリー)と混ぜ合わせてじっくり焼き上げ、濃厚な焼きプリン(バビンカ)を発明したようです。
また、マカオは世界で最も多様なプリン文化が融合した街でもあり、【中国風牛乳プリン(ガウナイビン)】と【ポルトガル風プリン(プディン・デ・カスタード)】と様々なプリンの歴史があるようです。
このように、【ビバンカ】の歴史には修道院からの副産物でした。マカオと修道院について調べてみると、修道院(および修道会)は単なる宗教施設ではなく、【大航海時代のアジア最大の情報・教育・医療の拠点】であり、マカオの街の土台そのものを造り上げた存在であるようです。
【ビアンカ】が台風名に選ばれたのは修道院に関連するお菓子であり、マカオの人たちにとって馴染みのあるお菓子でもあるため、名づけがされたのかもしれませんね。
ウーティップ(蝶)
【ウーティップ】は広東語で「チョウ(蝶/蝴蝶)」を意味する言葉で、「不老長寿」「固い絆の愛」を象徴する、非常に縁起の良い吉祥のシンボルであるそうです。マカオには蝶に関する伝承がいくつかあり紹介します。
【化蝶(ファディエ)】の伝承は、「夜中に家に入ってきた大きな蝶は、亡くなった家族や祖先の魂である」というものです。そのため、マカオの古い家庭では、家の中にどれだけ不気味な夜蛾や美しい蝶が迷い込んでも、「決して叩いたり、追い払ったりしてはいけない。祖先が怪我をしてしまう」として、自然に出ていくのを静かに見守る風習があるそうです。
【蝴蝶仙子(蝶の妖精)】の神話は、植物や花を守る女神(花神)の周りを飛ぶ【蝴蝶仙子(蝶の精霊・妖精)】の伝承です。蝶は美しい花々へ愛のメッセージを運ぶ「天界のメッセンジャー」とされており、蝶が自分の体に止まったり、目の前を横切ったりすることは、「近い未来に素晴らしいパートナー(恋人)と巡り会える、神様からの祝福のサイン」と言い伝えられているようです。
【香る蝶】の伝説は、古い猟師や先住民たちの間では、「特定の神聖な大木の周りには、ジャスミンのような高貴な香りを放つ幻の蝶(香蝶)が集まり、その蝶の羽が放つ粉を浴びた者は、あらゆる病気が治り長寿を得る」というスピリチュアルな大自然の伝説が語り継がれているようです。
このように、【ウーティップ】はベトナムの人にとって、神からの使いであり、病を癒すものであり、と神聖な生物であるようです。そのような縁起の良い生物がゆえに、台風名に選ばれたのかもしれませんね。
ペイパー(魚の名前)
マカオは、南シナ海に面した小さく静かな「漁村」から発展した歴史を持ちます。【ペイパー】はアンコウ(鮟鱇)や、現地で愛されているおにだるまおこぜ等の「観賞魚・魚の仲間」を意味します。マカオ周辺の海に生息するアンコウの仲間は、その平べったくユーモラスな体型が楽器の琵琶の形にそっくりであることから、現地で親しみを込めて「琵琶魚」と呼ばれています。マカオでは家庭の水槽でペット(観賞魚)としても愛されている馴染み深い魚です。
ペイパー(琵琶)は中国神話や仏教の伝承において、楽器の琵琶は神々が持つ聖なる道具であるそうです。なかでも、世界を守る四天王の一人である【持国天】は、必ず片手に琵琶を持っています。神話では、彼が琵琶の弦を爪弾くと、その神聖な音色によって地上の悪霊や邪気が退散し、宇宙の調和(風調雨順:良い天候)がもたらされると言い伝えがあります。
【持国天】の所持する琵琶には悪天候を退ける効果があるため、形が似ている【ペイパー】を観賞魚として育てることは、家の安全を願うといった思いが込められているのかもしれません。【ペイパー】がいることで、台風から家の安全を守りたいといった願いが込められて名づけたのかもしれませんね。
ペンニャ(マカオの名所)
【ペンニャ】は、マカオ半島南部の高台に佇む高貴な聖堂【ペンニャ教会】という名所があります。見晴らしの良い高台の頂上にあるため、【主教山】と呼ばれているようです。
教会の前庭には、海に向かって手を合わせる美しい大理石の「聖母マリア像」があります。古くからマカオを出発する船乗りたちは、船の甲板からこの丘の上のマリア像を見上げ、航海の無事を祈る風習(伝承)があるようです。
また、毎年5月13日に行われる【ファティマの聖母の巡礼】というマカオで今も受け継がれている最も厳かなカトリックの伝統行事があります。街中を静かに行進した行列が、最後に目指す聖なる終着地が【ペンニャ教会】なのです。
このように、【ペンニャ】は航海の安全を願うために、マカオの漁師にとって聖地であるようです。台風は海からやってくるため、台風が少しでも回避できるように願って台風名にしているのかもしれません。
ペイロー(鳥の名前)
【ペイロー】は広東語で「ヘラサギ(琵鷺)」という渡り鳥を意味する言葉で、絶滅危惧種でもある【クロツラヘラサギ】という種類をさすようです。マカオには、地元の古い人々の間で「幸運と冬の平穏を運ぶ使者(黒臉天使)」というスピリチュアルな伝承があります。
【黒臉天使】というのは、顔が黒く、クチバシが伝統楽器の琵琶(ペイパ)に似た鳥であることからで、マカオの湿地帯に姿を現すと、地元の漁師たちは「今年も厳しい台風の季節(雨季)が無事に終わり、穏やかで安全な冬の海がやってきた」と胸を撫で下ろしたと言い伝えがあります。
このように、【ペイロー】が訪れる季節には台風が終わる季節であるために、マカオの人にとって台風終了の判断材料のひとつとしていたのかもしれませんね。
インファ(花火)
20世紀の中頃まで、マカオの経済を文字通り爆発的に支えていたのが「爆竹(ファパウ)」と「花火(インファ)」の製造産業であったようです。中国の伝統において、花火や爆竹の「光と轟音」は悪霊を追い払い、幸運と繁栄を呼び込む神聖な儀式の道具として知られています。
また、花火の国であるマカオは、毎年9月上旬から10月上旬にかけて開催される世界最高峰の【マカオ国際花火コンテスト】があるそうです。
このように、【インファ】はマカオの歴史のひとつでもあり、幸運や繁栄をもたらす効果もあるため、台風名になったのかもしれませんね。
マーロウ(メノウ)
マカオを含む中国の伝統文化において、【マーロウ】は【仏教七宝】の一つに数えられる神聖なパワーストーンです。【仏教七宝】とは金、銀、瑠璃(ラピスラズリ)、玻璃(水晶)、シャコ(白珊瑚)、珊瑚、メノウの7種を指します。メノウには富と人間関係の調和、魔除けの意味が込められています。
ちなみに、マカオではメノウは取れず、中国やモンゴルで取れたメノウを流入され、マカオで加工を行っていたようです。そのため、加工したものが風水の文化に影響しています。
メノウは土地や建物に溜まる悪い気を跳ね返す力が強く、マカオの伝統的な住宅や歴史的な商店の入り口、床下などには、「鎮宅(ちんたく:家を平穏に保つ)」の目的でメノウの原石やスライスが埋められたり、置物として飾られたりといった風習もあるようです。
このように、【マーロウ】は魔除けにまつわる話が多くあり、マカオの人たちの日常にも溶け込んでいます。台風を避けたいために、名づけたのかなと思いました。
ムイファー(梅の花)
マカオに数多くある中国伝統の寺院では、梅の花はただの植物ではなく、神聖なシンボルとされてきました。特に新年の運気を左右する花であるようです。
中国の伝統的な縁起担ぎに【梅開五福(ばいかいごふく)】という言葉があり、梅の5枚の花弁には、それぞれ「福(幸福)」「禄(出世)」「寿(長寿)」「喜(喜び)」「財(財産)」を意味すると信じられています。マカオにも中国から信仰が伝わり信仰されているようです。
マカオで見られてる梅は、【宮粉梅】:マカオで最もよく見られる、華やかなピンク色の八重咲きの梅、【江梅】:野生種に近いシンプルな白のひとえ咲き(5枚花弁)の梅、【緑萼梅】:花弁は白ですが、がく(花を支える部分)や枝が鮮やかな緑色をしているため、全体的に高貴な薄緑色に見える珍しい梅、【朱砂梅】:濃い紫がかった赤色(紅梅)の種類の梅、といった種類の梅が見られます。
このように、【ムイファー】は日本の桜のような存在として親しまれているように思えます。マカオにとって縁起の良い花であるため、台風名にしたのかなと思いました。
サンヴー(サンゴ)
マカオにおける【サンゴ】は、メノウのところで説明した【仏教七宝】の一つに数えられる神聖なお守りです。
マカオの伝統的な風水信仰において、サンゴは「富」と「生命の継続」を引き寄せる特別なエネルギーを持つとされています。中国文化において「赤」は最も縁起の良い魔除けの色です。そのため、天然の赤サンゴで作られた彫刻(龍や福を呼ぶ神様の像)は、マカオの古い富裕層の邸宅や商店の風水インテリアとして【家運長久(家を長く繁栄させる)】や【子孫繁栄】を祈る対象として大切に伝承されてきました
また、マカオの地名の由来となった【世界遺産:媽閣廟】に祀られる【海の女神:阿媽(アマ)】は、漁師や航海の安全を守る神様です。かつてマカオが小さな漁村だった時代、海から採れる赤サンゴは「生命力の象徴」や「航海中の災い(嵐や水難)を退ける最強の魔除け」として漁師たちの間で深く信仰され、お守りとして身につけられていました。
このように、【サンヴー】はマカオの風水や漁村のお守りとして親しまれていたようです。また、水難を退ける魔除けとして、台風を寄せつけないという意味があるかもしれないですね。
マカオの台風を名を10個紹介していきました。台風名を調べてみたところ、教会関係の話であったり、中国から輸入した文化を取り入れていることが多いようでした。筆者自体はマカオの歴史が詳しくないので調べてみないとわからないですが、いろんな文化が入り交じり、マカオ独自の文化が埋もれているようにも思えました。
10個の台風名がどんなものであったのか、ダイジェストで送らせていただきますと、下のようになります。まとまりがないように思っていましたが、【教会関係の名前】と【中国輸入の文化の名前】が中心としているように感じます。
- サンバ(マカオの名所):聖ポール天主堂跡(ダーサンバー)→火事になっても正面の壁と階段は焼失しない
- ビバンカ(プリン):【バビンカ・デ・レイト】→教会で作った
- ウーティップ(蝶):神からの使い、病を癒すもの→神の使い
- ペイパー(魚の名前):体型が楽器の琵琶の形→世界を守る四天王:【持国天】の所持物(中国神話か仏教)
- ペンニャ(マカオの名所):【主教山】→航海の無事を祈る風習(伝承)→教会関係
- ペイロー(鳥の名前):【クロツラヘラサギ】、【黒臉天使】→ペイパーと似たクチバシ
- インファ(花火):爆竹・花火の製造産業→悪霊を追い払い、幸運と繁栄を呼び込む神聖な儀式→中国由来の文化
- マーロウ(メノウ):【仏教七宝】→中国由来のお守り
- ムイファー(梅の花):【梅開五福(ばいかいごふく)】→中国由来の縁担ぎ
- サンヴー(サンゴ):【仏教七宝】→中国由来のお守り
【教会関係の名前】:サンバ、ビバンカ、ペンニャ
【中国輸入の文化の名前】:ペイパー、ペイロー、インファ、マーロウ、ムイファー、サンヴ
【マカオの伝承】:ウーティップ
最初に名前の意味だけでどのようなまとまりがあるのか、調べていましたが、一つずつ調べてまとまりを調べていくと、マカオのように思わぬところで関連していることがわかりました。引き続き、台風名を調べながらその国の文化を理解していきたく思います。



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